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もう、それからは大慌て。
招待状は配ってるからさすがに今更『延期』なんて言えない状態。
愛花は映画の合間にはウェディングドレスの試着に走り、陸人は指輪を探しに走り、電話は毎日鳴り止まない。
細かい打ち合わせになると、あの人を呼ぶならこの人も、この人呼ぶならあの人もで、人数は増えに増えて、結局はホテルの大広間になった。
歩美も独占記事になったので、打ち合わせや、記事に追われた。
愛花と陸人の記事は本当に歩美にしか書けないから小田は歩美に記事は任せ、他の女優や俳優、関係者などからのコメント貰いに飛び回った。
テレビ局からはかなり取材依頼がきたが、とりあえずは八木澤さん所属のテレビ局がメイン。
引き出物はもう愛花の母親に任せた。
芸能界が『愛、陸人ゴールイン!!!』と騒ぎ出して、雑誌もテレビも2人の特集ばかりになってきた。
「あのさ、私ね、この前ウェディングドレスの試着しに行ったんだけど、………私が自覚できてないわ」
「俺も。タキシード着せられたんだけど、なんだかドラマの衣装合わせに感じて自分の事だと思ってないわ」
「撮影の合間にウェディングエステって、あり得ないよー!」
「こうなりゃ、新婚旅行くらいはバーンといっぱい取ってやろ?……絶対疲れてるわ」
「新婚旅行?!そうだよ!!それ、無いの?!」
「愛花の撮影が終わったら式だろ?そしたらもうドラマの撮影。……学校ギリギリなんだろ?学校優先して………あーーっ!新婚旅行はいつなんだよ?!」
2人の叫び声が響いていた。
だけど、無情にも時間は流れるわけで、やる事は溜まる一方なので、2人は忙しい合間をぬってなんとかなりそうまでは持っていった。
愛花の映画もなんとか無事に終わり、試写会は後回し。
さすがに式の前日は休みをぶんどった。
庭に出て、改めて2人で木蓮の前に座り込んだ。
「………なんだかめちゃくちゃ疲れてる。明日、大丈夫かなあ?」
「もうここまできたら大丈夫かなあ、じゃなくてやるしかねえよな」
「………でもさ、本当に私達だけじゃ、暇になってからっていつまでも式なんかできなかったかもね」
「それは、うん。激しく同意」
愛花が振り返り、木蓮を見た。
「………聞いたよ。この木、陸人が『残して欲しい』って、頼んだんだってね」
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