必然の歯車

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 かち かち かち かち かち かち かち かち かち かち かち かち  一音から一音までが一秒であり、一周が六分であるというのは俺にとって、すごく重要なことなのだ。多くの地球人にとって、地球の自転一周がだいたい二十四時間であるということと同じくらい重要だ。地球の公転の一周がだいたい三百六十五日とちょっとなのと同じくらい重要だ。この基準がなければ、俺は自分がここでどれくらいこうしているのかも分からなくなる。自分の人生のどれくらいの期間なのかも分からなくなってしまう。将来の予想さえつかなくなる。ところで俺は百才くらいで死ねるのだろうか。  ここに来てから俺は眠ることができなくなった。かち かち かち かち という音は全方位から響いているのだ。滝壺に住んでいるようなものだ。そこら中に似たような境遇の地球人たちがいて、それぞれ回転している。どこかに変速機があるのか、あるいは他の機構につながっているのか、違うリズムで音を刻むものもいる。
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