必然の歯車

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 かち かち かち かち かち かち かち かち かち かち かち かち  鏡がなければ、俺は自分自身の姿を正視することなどできない。首がちぎれるほど、眼球の筋肉が、視神経が切れるほど、視野を広くめぐらせても、見えるのは精々、部分的なものの切り貼りと解釈であって、全体ではない。そもそも、俺は自分の顔を自分の目を見ることができない。そこにいるのがウィトルウィウスでないとは言い切れない。  かと言って聞いてみる気にもならない。他者に自分の姿を聞いてみても、やはり自分自身で確認しなければ納得できない。それ以前に俺は自分の感じ方を信じられるだろうか。良い答えであっても、悪い答えであっても、恐れや悩みが潰えることはなく、むしろ疑いによって悪化させることになる。
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