必然の歯車

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 かち かち かち かち かち かち かち かち かち かち かち かち  ここまでの記憶は鮮明だ。あまりに鮮明すぎて、俺の混乱した脳みそが繕った妄想のような気もする。その後、宇宙人に遭った。いや、遭ったと思い込んでいるだけかもしれない。ここからの記憶ははっきりしない。俺は暴れ、寝かされているベッドはやたらギシギシと軋んだ。無影灯によって目がくらみ、それでも無理やり目を開けていると影が見えた。黒いのっぺらぼうが三つ。顔がないのは逆光のせいだけだろうか。のっぺりとしている。宇宙人だと思った。輪郭が三日月だったからだ。  宇宙人のひとりが短い鉄パイプのようなものを持っていて、軽く何度か振ると、キィィィンと嫌な音を立てはじめた。宗教的な鐘の音に似ている気がした。自分のへその位置など、あまり意識したことはないが、俺はそのとき、はっきりと、自分のへその位置を意識させられた。俺は恐ろしくて顔をそむけてしまっていたが、短い鉄パイプが俺のへそに当たるのが分かった。
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