初恋

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初恋

恋をした。一目惚れだ。 廊下ですれ違った時、心臓をハートの矢で撃ち抜かれたのだ。 男は麻美を通り過ぎていき、廊下を歩いていく。 麻美はその後ろ姿を火照った顔でじっと見つめた。 麻美は今まで生きてきた16年間で恋をしたことはなかった。 なのに、なぜ今恋をしたのか。 しかも相手は3年の先輩。今まで顔も見たことがなかったが、スリッパの色が緑なので3年と分かった。 麻美の色は赤、1年生だ。 それに、問題はそこではない。 顔が犬のブルドッグなのだ。比喩なのだが、比喩ではないくらい似ている。 身長も麻美と同じくらいでやや肥えている。 あの顔で首輪をつけられ、四つん這いで歩かれたら、ワンチャン学ランをきたブルドッグと間違えるかもしれない。そんなレベルだ。 学校の噂で、ブルドッグがいるとは聞いたことはあったが、あの先輩のことだった。 初恋とは思えぬほど衝撃的な恋で、麻美自身も吃驚していた。 厄介なことになってしまった。麻美はブルドッグ先輩にトキメキながら、自分の教室に戻った。 「あさみ~ん!一緒にご飯食べよ!」 昼休み、友達の薫が子供のようにはしゃぎながら、駆け寄ってきた。 「相変わらず元気ね、薫は」 「まぁね」     
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