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ニッキはいつまでたっても、グリンから離れてどこかに行きはしなかった。 夜はグリンの長い毛を布団にして眠った。
ある日ウサギがやってきた。
「お父さんがケガをしてしまったんです。食べ物を分けてください」
とツヤのない毛皮で震えながら言った。
「そんなこと関係ないね!」
グリンは叫んだ。ウサギがあきらめて背中を向けると、今度はその背中に向かって叫んだ。
「ああ、イヤだイヤだ。お清めにニンジンをまかなきゃ!」
そういって、ニンジンをバラバラ放り投げると、バタン!と大きな音を立ててドアを閉めた。
グリンは知らん顔していたけれど、ニッキはウサギが気になって、ドアを細く開けて外をうかがっていた。
ウサギはピョンピョンとんでもどってくると、ニンジンをせっせと集めて持って帰った。
「ウサギ、ニンジンを持って行ったよ!」
「ふーん、そうか。まあ、ニンジンがいつまでも外にあったら、くさってイヤな匂いがするから、持って行ってよかったよ」
とグリンは言った。
「ねえ、でもどうして? どうしてなの? あげるって言えば、ウサギはありがとうって言ってよろこんだんじゃないの?」
ニッキが聞いた。
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