雨と地龍。

1/1
前へ
/6ページ
次へ

雨と地龍。

いつもは静かに微笑んでいる友人が 無表情に雨降る外を眺めていた。 「どうかした?」 平淡な声が部屋に響くのを雨音が妨げる。 「……んーん、なんでもない」 雨の夕暮れ、暗い視界にキラリと光った友人の瞳。 「……なんでもあるでしょ」 「優しいなぁ。そうだね、なんでもあるよ。でも……今は話せないんだ」 ゆらりゆらりと煌めく瞳。 雲に隠れた夜空を溶かしたような美しさだ。 「……今は、なら、話せる時に話してね」 「……うん、ありがとう」 地の龍の聲を聴くのは自分だけ。 友を助けることは難しいのか。 「逃げて」 その一言はとても重かった。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加