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雨と地龍。
いつもは静かに微笑んでいる友人が
無表情に雨降る外を眺めていた。
「どうかした?」
平淡な声が部屋に響くのを雨音が妨げる。
「……んーん、なんでもない」
雨の夕暮れ、暗い視界にキラリと光った友人の瞳。
「……なんでもあるでしょ」
「優しいなぁ。そうだね、なんでもあるよ。でも……今は話せないんだ」
ゆらりゆらりと煌めく瞳。
雲に隠れた夜空を溶かしたような美しさだ。
「……今は、なら、話せる時に話してね」
「……うん、ありがとう」
地の龍の聲を聴くのは自分だけ。
友を助けることは難しいのか。
「逃げて」
その一言はとても重かった。
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