5人が本棚に入れています
本棚に追加
1.
日曜の朝。俺は一人ベッドの上で目を覚ました。
スマホで時刻を確認し、首を横へと向ける。
そこには自分の枕と並ぶようにしてピンクの枕があるだけで、その持ち主の姿はどこにもない。
耳をすまして気配を探るも、物音一つ聞こえることはなく、俺は
――ああ、まだ戻ってきていないのか。
と深い吐息をつきながら、のそりと身を起こした。
瀬戸内 茉那(せとうち まな)。七年前に職場で知り合い、その二年後に妻となった俺にとって最愛の女性。
付き合っている頃は気がつくことができなかった――と言うより、茉那がばれないよう隠し続けていたせいだ――が、彼女には他人にはないかなり特殊な性質があった。
正直、性質という表現で合っているのかもよくわからないのだが、茉那は眠りにつくとこの世界から消えていなくなる。
最初本人の口からこの話を聞いたときは、ふざけているのだと思い軽く受け流してしまったものだったが、実際夫婦になり一緒に暮らし始めて、それが嘘偽りない真実なのだと思い知らされるはめとなった。
最初のコメントを投稿しよう!