睡眠世界の結末は

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結婚して初夜を迎えたとき、茉那は俺に自分の秘密を打ち明けた。 十歳の誕生日を境に、突然眠りにつくとここではない別の世界へ転移してしまう体質になってしまったこと。 それは夜だけでなく、日中であっても眠ってしまえば発現してしまうこと。 だけど、一つだけルールがあり、誰かが側で寝ている自分を見ている間は消えずにいられること。 その代わり、ほんの一瞬でも――要は瞬きでもという意味だ――目を離せば消えてしまうこと。 夢の世界ではこの世界の自分より十歳若く、マニャーナという名前で冒険家の両親及びその仲間と共に旅をしながら生活をしているということ。 こっちと夢世界では時間の流れに誤差があるらしく、九時間の睡眠でも向こうでは十三時間は活動していられるらしいこと。 そして、向こうの世界で眠りにつくと、全く同じ条件でこちら側へと戻ってこられるらしいこと。 これらの情報を淡々と聞かされ、俺は最初何かのゲームに影響された茉那が創作話を聞かせているのかと疑った。 しかし、実際に茉那と一緒に布団に入り、彼女が寝ついたのを確認し目を逸らした瞬間、ほんの数センチ横にいたはずの茉那の姿がまるで幻だったかのように掻き消えたのを目の当たりにし、言葉を失ってしまったのは昨日のことのように鮮明に覚えている。
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