5人が本棚に入れています
本棚に追加
2.
茉那が夢世界へ消えて、二ヶ月が経過した。
結局あの朝以降、茉那はこちらの世界へ姿を見せることはなく音信不通の状態へと陥ってしまった。
彼女の両親にはすぐ連絡を入れ事情を説明した――茉那の秘密は把握していたので、説明が楽なのはありがたかった――のだが、娘が戻らなくなるという状況は義理の両親も初めて遭遇する事態だったようで、どう対応すれば良いのか皆目見当がつかない様子を見せている。
行方不明として捜索願を出したいところだが、その探されるべき当事者が別の異世界へ行ってしまっていては警察もお手上げだろうし、事の成り行きを素直に説明しても信じてなどもらえないのは明白だ。
むしろ、こちら側が怪しまれてしまうだけの可能性が極めて高い。
「今はただ、無事に戻ってきてくれるのを待つしかない。茉那を信じよう……。勇也くんには、心配をかけてしまい申し訳ない」
俺たちの住むマンションへ訪れ、茉那がいなくなったベッドを見つめながら義父はそう言って唇を噛んだ。
最初のコメントを投稿しよう!