深夜の動物愛護精神

5/5
前へ
/75ページ
次へ
「お前、俺の言葉わかるのか? でもなぁ、お前はかわいいけど俺んちのアパートは動物全般ダメで、猫なんて飼えないからなぁー……ごめんな」  猫に向かって話しながら撫でていると、蒼の指を猫はペロペロと舐めてきた。 「あっ、もしかしてお前、お腹が空いているのか? なんか食べ物を持っていたかなー。俺、コンビニ行く前なんだよな。コンビニ行けば、何か食べ物も調達できるんだけど……。お前いなくなっちゃうかもだろ?」  そう言うと蒼は、自分のカバンの中をゴソゴソと漁りだした。手に、ガサっとあたったパッケージの感触を確かめた後、カバンの中から取り出して猫に見せる。 「お前、ラッキーだぞ。今、このカニカマは猫が走ってでも食べに来るって評判で、大人気なんだぞ。最近品薄の人気商品なんだから、味わって食べろよな」  蒼は、パッケージを開けてカニカマを取り出した後、食べやすい大きさに割き、猫の口元へ運ぶ。  猫の口元へ持ってきたカニカマの匂いをクンクンと嗅いだ後、舌を出し口の中に少し入れクチャクチャと噛みだした。  初めに渡したカニカマを食べ終わった後、もっとくれと強請るようにミャーと鳴いているようだった。  その様子を見た蒼は、再びカニカマを割いて猫の口の前まで持っていく。その行為を何度か繰り返した後、お腹が満たされ満足した猫は、蒼の足元に纏わりつくようにスリスリし、気がすんだのか公園の茂みへ走って行ってしまった。 「すげーな、このカニカマ。さすが愛猫家が御用達なだけある……。こりゃ、本当にボーナス期待できるわ。しかし、さすが猫だな。お礼の鳴き声一つ出さずに帰って行ったぞ」  蒼は、自社製品の猫への威力に驚きながら『よっこいしょ』と立ち上がる。そして、最初の目的であったコンビニへ向かうのだった。
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!

615人が本棚に入れています
本棚に追加