615人が本棚に入れています
本棚に追加
/75ページ
***
結局、金曜日の夜にコンビニに寄った後に帰宅して以来、今の今まで寝たり起きたり、起きたと思ったらマンガを読んだりして、ダラダラと部屋で過ごしていた。
蒼が窓を眺めるとすでに西日が射しこんでいるのを見て、朝も昼も食事をとっていないのに気づく。そう思った途端、なんだかお腹が空いてきた気になった蒼は、カップ麺でも食べようと思い、台所へ向かう為に立ち上がる。
その時、微かに何か声がしたように感じた。
「なんだ?」
蒼は、今度は耳を澄ませる。そうすると、やはり微かに鳴き声が聞こえた為、声が聞こえたベランダの方へ歩みを進める。
ミャーミャー……… ミャーミャー………
ベランダに近づくと、外からなぜか猫の鳴き声が聞こえてきた。
蒼の住んでいるアパートの部屋は二階の為、木に登った猫がベランダに落ちて帰れなくなっているのかもしれないと思い、窓を開ける。
そして、ベランダに猫がいたのを見つけた為、抱えて玄関から逃がそうと思い、蒼が手を差し伸べようとした瞬間、その手を飛び越えて猫が部屋の中に入ってきた。
「えっ? ちょ……、なっ。勝手に入ってくるなよ。猫だとしても、この部屋は土足厳禁なんだから。汚れるだろう?」
「……は? 土足厳禁という部屋か? ここは……」
何かムカつく声が聞こえてきた。しかし、この部屋には誰もいない為、自分の気のせいだと思い、猫はどこだと周りを見渡した。
なかなか猫が見つからなかった蒼は、6畳一間の部屋なのにおかしいなと思いながら、布団を剥いでみたり、積みあがっているマンガをどけながら、汚い部屋をもっと散らかしつつ猫を探す。
「チッ……。お前、それやめろよ。ほこりが立つ。俺の喉がやられるだろーが!」
「はぁ? なんだ? 誰だよ、俺の部屋にケチをつけるヤツは。隣の家のヤツが大声で言ってんのか? でも、俺の部屋の事情なんて関係ないよな。それに、見たこともない……はず……」
蒼は、イラっとした声でブツブツ言いながら猫を探していると、ふわっと、足元に温かい感触の物が纏わりつく。
さっきの猫かもしれないと思った蒼は、下を向いて足に纏わり付いていた猫の存在を確かめ、玄関から出す為に、そのまま猫を抱え上げた。
抱えてその猫をまじまじと見ると、ロシアンブルーだった。
最初のコメントを投稿しよう!