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「えっ? あれ、お前……あの時の猫か? 金曜日の夜にうちの製品のカニカマを俺が食べさせた、あの時のロシアンブルー?」
「あぁ、まぎれもなくその時の猫だが?」
「えっ、なに? わっ! しゃ……べった?」
蒼は、急に喋り出した猫に驚いて抱え込んでいた手を離す。そしてその瞬間、猫が床に落ちた。
ドサッ
「イテッ、お前、俺を誰だと思っている? 急に落とすなよ、ケガをするだろーがっ!」
「ね、ね……ね、猫がしゃべっている? 俺、おかしくなったのか? ……っていうか、夢か。土曜日はずっと寝て起きてを繰り返していて頭が働かないから、現実と思い込んでいるけど、夢だな、きっと……。なんだ、そっかぁ夢か……」
ブツブツ独り言を言っていた蒼に対し、不遜に扱われた猫は、蒼の足の小指を噛んで自分の存在をアピールする。
「い、いってぇーー! 噛むなよ!」
「ほら、夢じゃないだろ? 人間は痛さで夢かどうか判断するんだろう? さては、お前はバカか?」
「それなのに、ケガさせるとか……この恩知らず! どこの飼い猫だよ。まったく、躾がなってない猫だな」
「その前に、お前の為に、わざわざ俺様が姿を見せてやっているのを喜ぶべきだ」
「はい? そんな上からの態度でいいのかよ。猫の分際で!」
「猫の分際? お前こそ聞き捨てならないな! それにお前は、何にもわかってない!」
そう言うと猫は、腰を後ろにやり毛を逆立てて威嚇のポーズを取る。それを見た蒼は飛び掛かられると思い、腕で顔を隠し守りの体制に入った。
しかし、少したっても仕掛けてくる様子がなかった為、そっと腕をどけて目を開け猫の方を見る。
「えっ!! な、な、なに? お、お前……何者だ?」
蒼の目の前にいたのは、あの生意気なロシアンブルーではなく、背の高い銀髪の切れ長の目をした綺麗な男が、猫耳としっぽをつけて裸で目の前に立っていた。
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