不思議な訪問者

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「えっ? な、なに? あ、あの生意気な猫はどこに行ったんだよ? しかも、なんで全裸の男が? 変態が猫耳としっぽをつけたコスプレしていて、まさか、ふ、不法侵入?」 「本当にお前は、バカかよ? どう考えても猫が人間になっただけだろ。この部屋に俺とお前しかいないのに、それ以外考えられないよな? ちなみに、俺は猫という名前じゃないし、動物の種類を連呼されるのは気分が悪い。リンという立派な名前があるんだよ。まぁ、カニカマくれた恩があるから、普段リン様って呼ばれているところを、特別にお前にはリンと呼び捨てで呼ばせてやってもいいぞ」  蒼はポカーンと口を開け、幾分自分より背の高い全裸の男を見つめた。  まったく、この猫と言い張る全裸の男の言葉が耳に入ってこない。やっぱり、夢じゃないのかと思い、ベタだったが自分の頬をつねってみた。 (いっ……痛い……)  この目の前で繰り広げられる奇妙な出来事は、本当に夢ではないのだと肩を落とし、蒼は項垂れた。 「おい、お前! 俺は今、毛がなくて寒いから何か羽織るもの出して。それと、こんな汚い部屋だと俺が病気になってしまうから、今から掃除して。待っている間、俺はこのテーブルにティッシュ敷いて座っているからさ……」  矢継ぎ早に命令して来たリンに対し蒼は、眉間に皺を寄せて睨みつけながら、ため息交じり口を開く。 「は? お前……」 「違う、リン」 「……リン、お前は家に帰れ。ここは俺んちだし、病気になるっていうなら外に出た方がいいだろう? ちなみに、俺はこの部屋で暮らしていても病気には一切かからないし」 「俺は、カニカマを貰ったお礼をしにお前に会いに来たんだ。だから簡単には帰れないから、ここにいる」 「カニカマ?」 (もしや、コイツがしようとしていることは、鶴の恩返し的なヤツか? カニカマ1つで?)  恩返しなら、控えめな態度でモノを言うのが筋だろう。なぜコイツは上から目線で話すのだろうと蒼は憤る。  それに、この家は猫だけではない、ペット全般の飼育は禁止されている。やはりこの無礼な猫を追い出そうと思い声をかけようとしたその時……。
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