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「ほら、降りたよ。早くしろよ……。俺の足の裏のピンクの肉球が黒くなっちゃうかもしれないだろ?」
「ったく、一言多くて可愛げないな……」
チッっと舌打ちした後に蒼は、パンツが入っている包装紙を開け、リンの片足を持ち上げて足を通したあと、もう片方も上げ、足を通してパンツを履かせる。
その後、さっき渡した蒼の着古した襟首がダルダルになっているグレーのスウェットを着せて床が汚いと文句をいうリンに靴下も履かせた。
「何から何まですまないな……」
「どうした? 急にしおらしくなって。リンにもそういう感謝の気持ちとかあるのか?」
その一言に、少し恥ずかしそうにそっぽを向きながら、リンは蒼に話しかける。
「お、俺だって、心はあるからな……。でも、パンツという代物、キツイ。こんなのを人間は毎日履いているのか? お前たち大変だな。それになんか、お前も着ているこのグレーのやつは……楽だけど、なんだか汚らしいな」
「はぁ? 俺の部屋着を汚いってバカにして。きちんと洗濯してるヤツだからキレイだっつーの。本当に一言多い可愛げのない猫だなぁ。お前、よく刺されずに今まで生きてこられたな」
「俺は、偉いからいいんだよ。ちょっとのわがままくらい」
「これが、ちょっとのわがまま? まぁいいや。とりあえず、パンツの件は少し我慢してくれよ。大変も何も、裸でいると人間は警察に捕まってしまうからな。それに、スウェットだけだと気持ち悪いだろ?」
リンは蒼の言葉に大きく頷いて、またティッシュを敷きつめたテーブルの上に戻って座る。
蒼はリンのその様子を見て、大きなため息を吐く。
(こいつは部屋が汚いと暴言を吐いたくせに、俺の家からも出ていかず、そして意地でも床に座らない気なんだな……。まったく可愛くないヤツ……)
蒼はダラダラするのが好きで、めんどくさいことが大嫌いだったので、出来るだけ人と関わらず生活をしていた。
しかし、結局は根は困っている人をほっておけず、元々面倒見がいい性格の為、今回の件もリンの強引さに流される形で世話を焼いてしまっている。
蒼の迷惑なんて一つも考えてなさそうな顔でテーブルの上でくつろいでいるリンを横目で見ながら、仕方がなく3か月ぶりに部屋の掃除にとりかかるのだった。
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