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もともと蒼の部屋は散らかってはいるものの、コンビニの弁当殻や、生ごみの類は腐臭がする為、きちんとごみ箱に入れている。部屋が散らかっている原因は、ティッシュや本などの紙類だ。一線を画してるとさえ思っていたのだ。
それなのに、このわがまま猫のせいで休日の大事な時間を使って掃除をする羽目になってしまい、自然と溜息が漏れる。
とりあえずティッシュをごみ箱に入れマンガをかき集め紐で括ろうと思い、本が括れる長さまで紐を伸ばすと……。
「ニャンッ」
急に、大きな体のリンが蒼に飛び掛かってきた。体がよろけてしまったが、かろうじて足で踏ん張り、倒れることは阻止して、飛び掛かってきたリンを見る。リンは、蒼の手元を大きく目を見開いてキラキラした面持ちで見つめていた。
「お、おま……、なんだよ。急に。危ないだろーが。あと一歩で尻もちをつくところだっただろう?」
「ねぇ、それなぁに? すっごいキラキラしている」
「はぁ?」
「それだよ。お前が手に持っている長いキラキラしたヤツ……」
「はぁ? この紐か?」
リンは、首がちぎれるのではと思うくらい力強く頷く。
それを見た蒼は、少し短めに切った紐をリンに手渡すと、嬉しそうに受け取ったリンは、渡した紐を頭の上に掲げてみたり、腕のスナップを利かせてヒラヒラさせたりと、楽しそうに紐でじゃれている。
「なー、これ、貰ってもいいか?」
「えっ? こんなの欲しいのか?」
「だって、キラキラして綺麗。掃除している間、これで俺、遊ぶからさ」
「は? こんな物を欲しがるなんて変わってるな……」
リンはニコッっと八重歯を見せて笑った後、またテーブルの上に戻って寝転んで、紐をヒラヒラさせながら遊んでいる。
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