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「ほら、どうぞ」
「ありがとう」
リンはそういうと、目をキラキラさせながら、皿に移した湯気が出ているラーメンを見つめ、一生懸命フーフーと息をかけている。息を吹きかけて舌でペロッと麺をひと舐めし『熱い』と声を上げては、舌を引っ張っていた。
蒼は首を捻り『舌を引っ張るのは熱さを紛らわすための行為なのか?』と思いながら、面白い動きをしているリンを見つめていた。
ようやく、リンの好みの温度になったらしく、皿に顔を埋めラーメンをムシャムシャと顔に汁を付けながら食べはじめた。
「リン、お前、箸使えないのか?」
「猫は、箸使わないだろ? あの足でどうやって棒を持つんだよ。食べる時に使うのは前足くらいなもんだよ」
そういうと、右手を蒼の前に出して前足での食べ方を蒼に見せつけてきた。
そして、よほどラーメンが気に入ったのか、右手もとい、右前足で皿を持ち蒼に突き出して、もっと入れろと命令してくる。
ラーメンを追加してあげると、再びリンは冷ますために息を吹きかけてている最中に、蒼に話しかけてきた。
「なー、お前はなんて名前なんだ? お前っていうのは、呼びづらいから名前呼びしてやろうかなって思って。俺、優しいだろ?」
「優しいというか、それ普通だから。俺は、あ、お、い。大空や、海を表す字を書くんだぞ」
「あおい? なー、蒼はなんで昨日の夜にカニカマ持っていたんだ? 俺、小さいころからカニカマが大好物でね。だから、カニカマをくれた蒼は、いいヤツって思ってるんだけどー」
「あぁ。俺は、リンが食べたカニカマを作ってる会社で働いているんだよ」
バンッ!!!!
リンは、テーブルに両前足を置き、蒼の前に興奮した顔を近づけてきたと思ったら、蒼の頬を、ざらついた舌でペロペロと舐め出した。
急な出来事に、蒼は目を見開き固まる。リンが舐め始めて少し経った後、舐められて濡れた頬を急いで手で拭う。
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