不思議な訪問者

12/16

615人が本棚に入れています
本棚に追加
/75ページ
「リン、なっ……」  興奮した面持ちで、リンは蒼に向かって話しかけてきた。 「あ、蒼、お前すごいな。俺、蒼のところに来てよかったよ。カニカマ大好物で、そしてカニカマ作っているんだろ? それに、ツンツンしているけど、時々とっても優しい。そういう猫っぽいとこ好き。それに、顔も可愛いし。これはきっと運命だよ、ねっ」 「はぁ? 運命? お前何言っているんだよ。……っていうか、リンは、なんで俺の顔を舐めたんだよ。気持ち悪いな」 「へ? 嬉しい時とかに普通は舐めるだろう? 違うのか?」 「それ、猫の常識かもしれないけど、に、人間同士は舐めないって!」  プリプリ怒っていたら、シュンっと猫耳が垂れて、スウェットのウエストから出していた、しっぽもいつのまにか下向きに垂れていた。  リンは、『蒼怒った? 怒った?』と、周りをうろついて背中に顔をあててスリスリして、しっぽをパタパタ床に打ち付けている。こういうところは、やはり動物だなと思いながら、プッと吹き出しそうになるのを蒼は我慢して、もう少しだけ怒っている態度をしておこうと思った。  なんだか、いつの間にかこいつのペースに巻き込まれて、家つき猫みたいになっているなと苦笑いを浮かべる。しかし、このまま飼い猫でもないリンを、ペット不可のこの家に置いておくのはいけないと思い、背中に顔を擦り付けていたリンに向かい合って座りなおした。
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!

615人が本棚に入れています
本棚に追加