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振り向いて、真剣な顔でリンを見つめると、キョトンとした不思議な面持ちで蒼をリンは見つめ返してきた。
「蒼、どうした?」
「なぁ、お前は家に帰らなくていいのか? リンは毛並みもいいし、ロシアンブルーって血統書付きの猫だろ? リンの飼い主、お前のことを探しているんじゃないのか?」
「探してない。大丈夫だよ」
「じゃあ、親は?」
「親も平気、むしろ追い出されたから、俺……」
「はぁぁぁぁぁぁ?」
蒼は、リンの肩を持って強く揺する。
こんな綺麗な猫が、飼い主も探してなくて、親に追い出されたって一体どうしてそんなことになっているんだろう。捨て猫ってことなのだろうか。
もしかしたら、カニカマを食べさせた俺にお礼をしようとして、飼い主や親に黙って勝手に出てきたのかもしれない。こいつならありえる話だろう。
それに、リンは普通の猫とは違う、人になれる特別な猫なのだ。
(俺の為に出てきたなら、家に帰さないといけないな……)
リンの目を見て、ゆっくりと蒼は優しい声色で話し始める。
「リン……。俺は、偶然お前に会ってカニカマを食べさせただけに過ぎない。お前は親のところに帰れよ。だってリン、お前まだ若いんだろう?」
「俺は3歳だし、もう子供じゃない十分大人だよ。それに帰らない。帰りたくないっ!」
「ワガママ言うなって。リンの両親も心配しているだろう?」
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