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「つがいには、ならんっ! 俺は男だ! 胸の大きな女がいいんだよ! それにかわいいってなんだよ!」
男の尊厳をひどく傷つけられた蒼は、外に干して先ほど取り込んだばかりの、少しだけふかふかを取り戻した薄っぺらい布団をかぶり丸くなって自分のテリトリーに、リンが入ってこないようにバリケードを張る。
(あ、あいつ………。俺の方が、10歳近く年上なのに、俺の、俺のを……かわいいって言いやがった。俺のは、日本人の平均だっつーの。猫のあいつのは、確かに大きかったけどさ。そもそも猫のつがいってなんだよ。……ってことは、俺がメスで、あいつが俺に突っ込むのかよ。いや、俺が突っ込むのか? どちらにしろ、ない、ない、ないっ!! それなら、せめてメス猫がいい!)
布団を被りながら蒼は憤る。
そんな中、こんもり盛り上がっている布団の前で、リンは正座をして蒼の様子を窺っていた。
リンは、布団の上から蒼を前足でチョンと触る。触られる度に、蒼はモジモジと動いた。それを何度か繰り返していたが、布団に包まっていた蒼は、イライラしながら被っていた布団から顔だけを出してリンに抗議をする。
「俺は、怒っている。俺は、34歳。お前は24歳。猫年齢だと3歳だぞ! お前は、まだまだお子さまなのに、そいつに俺の……が、かわいいって言われている気分はどうだ?」
「うーん……。シ、ショック?」
「そうだ。なのに、お前ときたら俺のアソコを見て、かわいいと言い放った」
「で……でも……本当に可愛かったし……」
「チッ。でもじゃない。ここは誰の家だ? 忘れたのか?」
「………あおいの家です」
「だよな? それなら、俺のことを尊敬しないといけない。俺のアレ……を、大事な俺のを、小さいとか、かわいいとか言っちゃだめだ」
「でも、お、俺、ち…小さいって一言も言っていない」
布団から顔を出していた蒼は、みるみるうちに真っ赤になり、再び布団の中に顔ひっこめた。布団の外からは『なんで、ひっこめるー。俺悪くない。今のは蒼がぁー』と喚きながら布団に力を込めて剥がそうとしていたのをどうにか蒼はくい止めるのだった。
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