猫を飼うということ

3/4

615人が本棚に入れています
本棚に追加
/75ページ
「そうだ。俺、月曜日から金曜日まで毎日カニカマの会社に行かないといけないんだ。だから、お前は昼間は留守番な」 「ヤダ、ヤダ!! 俺も行くー! カニカマ、カニカマ!」 「ダメに決まっているだろう? お前は家で猫らしくのんびり過ごしていろよ。お前たち猫は夜行性だろ。だから、昼間は寝て過ごすんだろ?」   会社に行きたいと駄々を捏ねるリンを止めると、不貞腐れたように冷めたトーストをムシャムシャと食べて、テーブルにこぼれた食べカスを前足でテーブルの下にワザと落とす。  落とされた床のパンくずを見て、蒼はリンにも聞こえるように大きなため息をついた。 「お前なー、俺がいくら片付けをするのが苦手なズボラな人間とはいえ、食べ物のカスとかはダメなんだからな、虫が湧くだろう? ちょっと、朝から仕事増やすなよー」 「ふん。ケチー。小さい人間だから、蒼のちんこも小さいんだー」 「それとこれとは違うだろうが。はぁ……しょうがないなー。おとなしくしていたら、カニカマ貰ってくるから、家にいてくれよ……なっ」 「えっ? あの美味しいカニカマ? 本当に貰って来てくれるの? ならしかたないなー、蒼の顔をたてて俺はいい子だから、おとなしく家にいてやるか」  カニカマの話題を出した途端、リンの目の色が変わり、ゴロゴロと喉がなる。その変わり身の早さと、本当にカニカマが大好きなんだということがおかしくて、自然と笑みが浮かぶ。  自己中心的な割に、意外と単純で、扱いやすいリンの攻略法を覚えて、今まで一人でぼーっと過ごしていた蒼の日常生活に、少しだけ彩りが加わった気がしたのだった。
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!

615人が本棚に入れています
本棚に追加