猫を飼うということ

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***  日中の仕事を終え、カニカマを購入して家路を急ぐ。  急いで家に帰って来て玄関を開けると、真っ暗な部屋からリンが目を光らせて、勢いよく走って体当たりして来た。 「あおいー、遅いっ」 「いったぁ……。おまっ、爪立てるな」  しっぽをブンブン振って、蒼の足にしがみついたリンは、そのまま床に下りて項垂れてシュンッとする。 「……悪かったよ。これでも早く帰って来たんだぞ」  謝ってきたリンの声が反省の色が濃くでていたのが可愛くて、そのまましゃがみこんでリンの額を撫で上げる。その行為が気持ちいいのか、目を細めてゴロゴロと喉が鳴っているのが聞こえてきた。  1日狭い部屋にいたリンは、誰とも会話も出来ず寂しくて、蒼が帰ってきたことで安心したのかもしれないと思い、リンの深碧の綺麗な目を見つめるとその瞳は、少し濡れているように見えた。 「リン、寂しかったか?」 「はぁ? 寂しいはずないだろー。俺、寝てたし」  リンは、そう言葉を吐き捨てると、リビングへ歩いて行った。その後ろ姿を見ているとしっぽを垂直にあげている。言葉では悪態ついていても、しっぽでの表現は隠せないんだなと思って、自然と笑いがこみあげてくる。 「プッ、くっ、くっ、くっ……」  リンに聞こえないように、スーツの袖の部分で口元を隠したが、先を歩いていたリンが振り返り憮然とした顔を向ける。 「何を笑ってるんだよ?」 「いやぁー、お前、かわいいとこあるなって思ってさ」 「はぁ? 俺はカッコいいところはあっても、かわいいところなんて1つもないからな」 「はいはい」  リンのそのしぐさや言動も可愛くて、ついつい蒼は笑みがこぼれるのだった。
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