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「リン、いい子にしていたか?」
「今日はたくさんカニカマ貰ってきてくれるっていうから、しかたがなく蒼の言う通りにジッとして家に居たよ。俺エライか?」
「あぁ。エライ、エライ。だから、仕事で疲れているというのに、お前の言う通りに今お腹を撫でてあげているだろう?」
「蒼、疲れているのか? じゃあ、もういい」
蒼にお腹を撫でられていたリンは、急に4つ足で立ち上がり人間の姿になり、そばにあった自分用のスウェットを手慣れた手つきで袖を通していた。
何度見ても、人間になると気品があって綺麗でカッコいいリンに目が奪われる。
「リンって人間になっても綺麗だな。俺の冴えない感じとは大違いだよ」
「ん? 蒼はかわいいだろ? 俺が、かわいくて、いい匂いするから、蒼につがいになれって言っているくらいなのに……」
「まだそんなこと言っているのか? 俺たちは男同士。俺は、お前の子供を産むことも出来ないし、猫と人間という弊害もあるし。それにお前の親も許さないだろう?」
「蒼って、頭が固いんだなー。おじさんって柔軟に考えられないの? 俺の親は大丈夫だよ。そういうのに偏見ないし、俺の親が法律みたいなもんだし。それに、俺と蒼なら子供も作れるしね」
「はぁ? なに言ってんの? 男同士で子供なんか作れるはずないだろ。それに、法律みたいって……どういう……」
「え? そのままの意味だけど? 俺の親、猫界の中で一番偉いんだよ。リーダーというか王様だもん」
「は? 王様? なにそれ……」
猫の王様? 法律ってことは、日本でいうと総理大臣ってことなのだろうか。それより、ここにいるさっきまでお腹丸出しで寝ていて、蒼の着古したスウェットを着ているワガママ猫が、王子様ってことになるのだろうか……。
蒼は、信じられない面持ちで、ボーっと目の前のリンを見つめていた。
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