好きと好きは背中合わせ

3/7

615人が本棚に入れています
本棚に追加
/75ページ
「はッ、ん……あッ、リ、リン……?」 「そ。俺だよ。言葉で言ってもダメなら、既成事実を作ればいいんだろ?」 「え? そ……そんなのダメだって。しちゃいけないってば……はぁ……」 「なんで? 俺、蒼のこと好きだよ。だから、そういう時は交尾するのは常識だろ。で、俺の事しか考えられなくしてやるんだ。大丈夫だよ。あとできちんと人間の姿になって入れてあげるから……ね」 「……俺の気持ちは? 俺の気持ちは、無視かよ……」 「き、き…もち……?」 「リン、ごめん。お前のことは好きだけど、お、お前と一緒の気持ちじゃない……」 「な、なんで? 蒼も俺の事好きだろう? だって、好きなら交尾するよな?」  蒼の胸付近にいたリンは、スウェットの裾からするっと出てきた。そして、蒼の顔の前にちょこんと座って不安な顔で見つめてくる。それを見た蒼は、寝ていた体を起こしてリンの前に座る。小さい体で丸まっている猫の姿のままの毛並みのいいリンの頭を撫でながら静かな声色で話し出した。 「好きにも色々種類があるんだよ。猫の世界は、交尾が出来るか出来ないかで、もしかしたら愛情を量るのかもしれないけど、人間は基本的に、愛情が生まれてその後にセックスをするんだよ……」 「で、でも、蒼はいい匂いしているし、きっと俺と蒼はそういう運命だと思う。だから、だからさ……」 「リンっ!!」  聞き分けのないリンに対し、蒼は少し大きな声で咎めると、リンの体はビクッと緊張したように固まっていた。  リンの目がキョロキョロと落ち着かないように目線を動かしながら、ボソボソと話してくる。 「だって……」 「だってじゃないんだよ……。交尾をしたからといって俺の気持ちが変わるなんてないんだって」 「でも、みんな交尾して一緒にいるよ。それを……俺と蒼もするだけだろ? しないってことは……俺といれないってことだよな」
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!

615人が本棚に入れています
本棚に追加