好きと好きは背中合わせ

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 なんでそんな極端な発想になるのだろうか。  ヤルかヤラないかで、ずっと共に過ごすか過ごさないかの判断材料なんて、早計だと蒼は思った。猫は、それ以外の感情表現はないというのだろうか。好きの種類には色々あるってことを教えてあげた方がいい。 「リンと一緒にいるのは楽しいし、好きだよ。嫌いなら一緒にいれないし、俺は人付き合いもめんどくさい男なのに、リンとは自然と一緒に居ても苦痛じゃない」 「なら……」 「でも、違うだろ。好きだから交尾したいは、本当に好きなメス猫とすべきだ。いい人だから好きってレベルの俺とはするべきじゃないんだって」 「あ…おい……。俺、お前の事好きっていってるだろ! なんでわかってくれないっ!」  蒼は、リンに何度も『リンが抱いている好きという感情は交尾に直結すべき感情ではない』と伝えても理解してもらえないことに、大きなため息を吐いて最後に『なぁ……、わかってくれよ』と眉間に皺を寄せながら、呆れたようにリンを見つめながら呟くのだった。  リンは、蒼に撫でられていた頭をブルブルと振り、『ミャー、ミャァー……』と猫の声で鳴く。そして、そのまま窓際までトボトボと歩いていき、自分で10センチ程窓を開け、一瞬蒼の方を振り向いて顔を見つめてきた。 「蒼こそ、俺の気持ちがわかってない。人間の感情でしかものを量ってないんだよ。俺の事うっとおしいならそう言えばよかったんだ。最初から俺に出ていけっていってたもんな……。だから俺の気持ちを置いておいて、メス猫を探せなんて酷いことを言えるんだよ」 「ち……ちがう」 「違わないだろ。少しは俺の感情を認めてくれてもよかったんだ。それさえもしてくれないんだもんな。俺も、無理やり交尾しようとしたのは悪かったけど、でも……もういい。俺、蒼が望むように出ていくよ」 「そんな……こと俺は……」  リンは『……蒼、バイバイ……』消え入りそうな声でそう言い残して、窓の隙間から走ってベランダの下へ降りて家を出て行ってしまう。  そのリンの様子を蒼は、固まったまま寂しそうな目で見つめることしか出来ずにいたのだった。
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