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6時にセットした目覚まし時計が鳴る。
蒼は、布団の中から目覚まし時計を止め、重い身体を起こし、ボサボサになった頭を?き、そして、とりあえず周りを見渡してリンの姿を探す。
金曜日の深夜にリンが出て行ってから、朝を迎える度に『今日はいるかもしれない』と部屋の中を見渡すのがこの3日間、行っていた事だった。
「やっぱり、今日も帰ってきていないか……」
もしかしたら、リンが気まぐれで帰ってくるかもしれないと思い、窓は3日前にリンが出て行ってから、10センチ程開けてずっと寝ていた。3日目の朝も帰ってこなかったことに、少しは期待していた蒼は肩を落とす。
蒼は、リンを傷つけて自分から追い出すような真似をしていたにも関わらず、自分のリンへの執着心に辟易する。よくテレビで目にするペットに対する溺愛ってこんな感じなのかもしれないなと、静かにため息を吐いた。
そして、仕事に行くためにいつものように歯を磨いてコーヒーを入れる。そこには纏わりついてきていたワガママな猫の姿はなく、ひとりぼっちの朝がこんなに静かで寂しいという名の孤独をひしひしと感じていたのだった。
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