突然の訪問者

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「じ、じゃあ、なんで……。あんたたちは、ここに来たんだ? もう俺は、関係ないだろう?」  その瞬間、2匹の猫はお互いの顔を見つめ顔を曇らせる。そして抹茶が、蒼の目を見つめながら再び喋り始めた。 「王様が、いい年なんだから伴侶を見つけるように言われて、リン様は家を追われて外の世界へ行きました。でも、2週間ほど前に自宅に戻られたんですが、私たちは伴侶を見つけたから帰ってきたのかと初めは思ってました。しかし、元気がないのです。私たちがリン様に話しかけると『つがいは見つかったが、片思いでどうにもならない、もうあきらめてくれ。他の人は考えられない』の一点張りで……」 「えっ?」 「蒼様、リン様の運命の相手は、あなただったのでしょう?」 「な、なんで……」 「猫の嗅覚をなめないでください。私たちはこの家を見つけるために、2週間前のリン様の匂いを伝いながらやってきました。そして、この家が一番2人の匂いが混ざり合って強い甘い匂いがしたのです」 「は? 甘い匂い?」  蒼は、首を傾げながら聞いたことがある言葉を反芻する。 『蒼って、いい匂いする。すごく甘い匂い』  今、抹茶が言った言葉は2週間前にリンにも言われたことのある言葉だった。  リンも言っていた甘い匂いがなんだっていうのだろう。蒼自身は、一切甘い匂いを感じなかった為、リン達が言っていることが分からなかった。  そして、甘い匂いが蒼とリンにとってどういう意味があるというのだろうか。  蒼が疑問に思っていることを見透かすように、抹茶がまた話し始めた。 「甘い匂いは、猫の中でつがいを象徴する匂いなのです。お互い一生の相手が見つかると、自然と耳の後ろから甘い匂いが漂ってくる。ここの部屋全体が、今は少し薄くなっていますが、リンさまと蒼さまの甘い匂いで包まれています」
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