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「ごめん……。あんたたち、リンの為に来てくれたんだろう? でも、俺はわからないんだよ。今、色々言われたけど、あんたらの世界のことも、リンのことも、俺自身の気持ちのことも……」
「す、すみません。こちらの事情ばかり押し付けてしまって。でも、あんなリン様を私たちは見てられなかったんです」
「でも、あいつがここに帰ってこないのが答えだろう。俺はもう関係ないんだよ。それに、アイツには幸せになって欲しいし、俺が一緒だとメス猫とも出会うこと出来ないだろう。だから……」
「 リンさまがいなくなってどうでしたか? 心にポッカリ穴が開いたみたいに寂しかったのでは……」
「…………」
「私たちは、今夜はとりあえず帰ります。でも蒼さま、少しだけ考えてみてくれませんか? あなたにとって、少しの間しか過ごしてない猫だとしても、リンさまの存在を……。今一度……お願いします」
そういうと2匹の猫は、リンの為に開けていたベランダに通じる窓の隙間から出ていった。その姿を複雑な表情で見つめて、蒼は深いため息を吐く。
急に、想像すらしていなかったことをたくさん言われて、なにから整理すべきなのかもわからない。リンは猫の中でも王様になりうる、頂点に立つべき男なのだ。
それなのに人間の年上の男を伴侶として迎いいれるとか、こんなグータラしながら過ごしている男がいいとか、趣味が悪いにもほどがある。
短時間にいろいろな情報がいっぺんに頭の中を駆け巡ってパンクしそうだった蒼は、とりあえず布団に寝そべって天井を見上げて目を閉じた。
「なんだか疲れた……。でも、リンがお腹を空かせてなくて、そして無事に家に帰っていてよかった……」
家を出て行ったときに、大好物のカニカマを持たせてあげたらよかったなとか、リンがお腹を空かせてないか、温かくして眠れているかなど、心配で仕方がなかった。
今回、抹茶と小豆にリンの近況を聞いて、蒼はホッと胸を撫でおろす。ここ最近ずっとリンの事を考えて寝不足だった蒼だったが、安心した途端に急に睡魔が襲い掛かってくる。
「む、難し……いことは、明日考え……よ……う……」
そして蒼は、思考のスイッチをオフにして、再び夢の中へ舞い戻るのだった。
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