プロローグ

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 蒼は、飲み会で繰り広げられる社交辞令的な会話が面倒で、歓迎会や送別会など主要イベント以外は参加しないように避けていた。  今回も、カニカマがバカ売れしただけの任意参加の祝賀会だ。出来れば参加せずに金曜日の夜は特に、家でユニフォーム化しているグレーのスウェットを着てアイス食べながらゴロゴロして漫画を読んで過ごしていたいと思い、一瞬顔を歪める。  そして、『誘うなよ』という顔で坂口を見るも、空気の読めない部下は一向に気づく様子がない。  それどころか、その話を聞きつけた数名の社員が、蒼を取り囲んできた。 「部長、今度こそは逃がしませんよ。飲み会の部屋に部長がいても、俺たちは息が詰まりません。むしろ、大歓迎です! いつも同じメンバーだから、つまらないし、僕らは、部長と盃をかわしたいんです!」 (めんどくさいことになったな……。当日は頃合い見計らって、さっさと帰ろう……)  朝っぱらからキラキラとした目で誘われても……と思ったが、何度も自分の都合で断っていたら今後のチームの士気にかかわるかもしれない。そう思った蒼は、部下からの誘いを渋々了承するしかなかったのだった。  そして、行きたくもない飲み会の詳細が書かれた回覧が机の上に置いてあり、回覧に視線を落とした。 (あいつら、こういう行動は早いな……)  回覧を確認すると、飲み会の日程は今週の金曜日に決まったようだった。  面倒くさいという思いを乗せた重めのため息を吐いた蒼は、自分の名前が書いている場所に印鑑を押し、次の人へ回覧を回したのだった。
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