梅雨の晴れ間に

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 正しい答えが見いだせないまま、時間だけが過ぎていく。    もともと一人で一生を終えるのだろうなと、漠然と考えていた。それが、リンと一生添え遂げると考えた時、猫の寿命と自分の寿命、そして、蒼が生活している環境に変化が訪れるのだろうか。その変化が訪れた時にそれでも自分は、リンと一緒にいたいのだろうか。  様々な出来事、自分の思い、将来への不安、疑問、考えれば考える程、頭がパンクしそうでどうにかなりそうだった。  そして、リンがいなくなって以来、蒼の心にポッカリと穴が開いているようで、孤独に押しつぶされそうになっているのもまた事実だった。  その証拠に、布団にはリンの残り香がもうほとんど無いにもかかわらず、いまだにリンの寝床の匂いを嗅ぎながらではないと眠りにつけないでいる。  偶然に出会って、少ししか過ごしていない猫のことで一喜一憂して、こんなにも自分の生活の一部になっていると思わなかった。これが、あの猫たちが言っていた運命の相手ということなのだろうか。  とりあえず、リンと話せば、少しは自分の気持ちが見えてくるのかもしれない。 とにかくリンに会おう。そして、自分の気持ちと真剣に向き合おうと蒼は思った。  自分の気持ちが固まったところで、蒼は急に青ざめる。 「そもそも、アイツに会うためにはどうしたらいいんだ?」  人間のように電話で連絡するわけにもいかないだろうし、鈴を鳴らせばすぐ来るような距離でもないだろう。この前、蒼の家に来た猫たちも『考えてください』と言ったのみで、蒼に連絡手段や後日会いに来るとも伝えられてない。彼らが、伝えたいことだけ伝えて蒼の家から去ってしまっているのだ。
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