梅雨の晴れ間に

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「チッ、あの猫たち使えねーなぁ。リンのこと考えてって言って来たわりに、リンの住処教えないとかないだろう。あっ!そうだ。猫……うん。アイツは猫だもんな。もしかしたら、リンの場所がわかるかもしれない」  何もしないより、1%でも可能性があるのなら、行動に移した方がリンに会える確率が高まると思い、蒼はイチかバチか思いついた方法を早速試してみようと立ち上がった。  はやる気持ちを抑えてジーンズを履き、シャツを羽織り、冷蔵庫からリンの大好物の大量のカニカマを出し、トートバックに詰めた。そして、玄関でスニーカーを急いで履き、初めてリンと出会った公園へ向かう。  この公園にリンがいることはないと思うが、他の猫なら居るはずだ。  猫は夜行性で、時折猫の集会を開くって何かで読んだ気がする。もちろん、すべての猫がリンたちのように会話が出来るわけではないのは知っているが、でも会話は出来なくても言葉はきっとわかるはずだ。  そしてきっと、猫たちはリンの存在を知っている。  あいつが言っていた父親が猫の王様で、アイツが王子様ならば……、必ず、きっと……。  たくさんの猫たちにリンの情報について聞き続ければ、会う手がかりが掴めるかもしれないと一縷の望みを抱きつつ公園へと急ぐ。  息を切らしながら、リンと初めて会った公園の木の前で立ち止まる。  周りを見渡し、猫がいないか確認をするも、猫1匹すら見当たらない……。  意気揚々と公園に乗り込んでみたものの、猫すら居ないのであれば、手がかりどころか、もう探すのも無理なのかもしれないという気すらしてくる。 「はぁ……。ダメだったか……。猫は夜行性だし、この場所なら猫がいそうな気がしたんだけどな……。まさかもう二度とリンには会えないのか……」  公園まで走ってきた蒼は肩で息をしつつ、項垂れる。そして、自宅に戻ろうとし踵を返したその時、鈴の音が聞こえた。急いで鈴の音が聞こえた方へ目を向ける。
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