恋い慕う想い

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 その態度を見て、蒼はショックを受けたまま、肩を落とした。そして、俯いたまま気弱な声でリンに話かける。 「あ……。ご、ごめん、俺、いまさら都合のいい……」 「お前、俺の事をいらないって言った。なのに……なんで俺を探すんだよ」 「わ、わかんない。リンがいなくなって心にポッカリ穴が開いたようで。寂しくて、リンがメス猫と一緒に幸せになってくれたらいいと思うんだけど…思うんだけど……」 「けど?」 「わがままだけど、俺のそばにいて欲しいとも思っていて。一人が楽でいいって思っていたのに、いつの間にか俺の中でリンが心の中を占拠しているんだ。リンが出て行ってから、いつもリンの寝床の匂いを嗅ぎながらじゃないと眠れなくなっていて……。あ、ごめん。なんか……気持ち悪いよな?」 「…………」  蒼の首元にふわっと手が伸び、背中が温かい体温を感じた。  そして、ドクンドクンという心音が体に響く。蒼は、俯いていた顔を上げ、後ろを振り返ろうとした。 「リン……?」 「あおい……。それって、俺の事が好きってことじゃないのか?」 「好き? 俺は、前から言っているけど、リンの事は好きだよ?」 「違う。お前が、俺のメス猫になってもいいってくらい、俺の事を好きってことじゃないのか」 「えっ? メス猫? 俺は、男だし。そんな、男なのにメス猫になんてなれないよ。子供も産めないし、リンは将来、王さまになるんだよな。お前にとって、俺はマイナスでしかないだろ。付き合ってもプラスになんか働かない」  リンの事は大好きだが、メス猫のようにセックスに応じることも出来なければ、子供を産むことも出来ない。こんな冴えない年上の男で、この綺麗な男の隣で笑っていれるような人ではないことは、自分の立ち位置を把握している蒼は把握していた。  ただ、このまま一緒に暮らしていきたいだけで、リンとこの先どうこうなりたいとまでは思ってはいなかった。その束縛は、リンの気持ちを何一つ考えていない酷く自己中心的な想いだった。 (結局、俺は……気持ちに答えられないのに、一緒に居たいという思いだけで、リンを探すべきじゃなかったのかもしれない……)  蒼は、少し悲しい顔をリンに向けた後、再び視線を床に落とす。そんな蒼の様子を見て、リンは再び口を開いた。
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