未来への光

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「リン?」 「だって、おまえ、なんか決心した顔している。待って、待って……俺、まだ寝起き。寝起きで、なんかショックなこと言われたら、爪で引っ掻いてしまうかもしれないし。もしかしたら、噛んでしまうかもしれないし……もうちょい……」 「……好きだよ」  蒼は、静かにそして精一杯の愛情をこめて呟いた。 「へ? それは……どっちの?」 「俺、お前よりだいぶ年上だし、だらだらと休日過ごすし、カップ麺ばっかり食べるし、掃除もいまいちだけど……でも、恋人にしてくれるか? ……お前の、その……つがいになってもいいか?」 「え? ほ、ほんと?」 「あぁ。リンと交尾したけどさ、それがよくなくって幻滅しちゃって、俺のこと嫌になってなければだけど……」  猫の姿で飛びついてきたと思ったら、そのまま人型になって蒼は薄い硬い布団の上に押し倒される。  リンは、嬉しさを表現するように、蒼の頬をペロペロと舐め回された。そのリンの唾液でベタベタになった頬を手で拭い、蒼はリンを抱きしめる。 「リン。俺で本当にいいのか?」 「ん。蒼がいい。ダラダラ過ごすのは猫も一緒だし、片付けられないのはあれだけど。それに、俺が掃除を手伝えるかわからないけどさ、手を貸すし。猫の手でも借りたいってよく人間いうだろ? あと……あと……かわいい子供も一生懸命作るし。交尾だって毎日してもいいぞ。それから……、それから……」 「は? ちょ。それは体力的に……それに子供はまだ早いんじゃないか?」 「いや、俺と蒼の子供は、絶対かわいいし、俺、体力あるから交尾には自信ある! 何匹つくる?」 『なんの自信だよ』と思いつつも、ニコニコしながら興奮して話しているリンの姿に心がほっこりと温かくなる。そして、体中が愛情で包まれるような感覚になって、胸がいっぱいになる。  きっと、猫と人間との恋愛なんてうまくいかないと決めつけていた蒼は、そんな感情が自分の中に湧き上がるとは思っていなかった。
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