深夜の動物愛護精神

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***  案の定、今日の『カニカマ大量受注販売おめでとう』という名目の飲み会は、滅多に参加しない蒼の周りに好奇心旺盛な部下たちが群がり、プライベートを根掘り葉掘り追求された。  その度に蒼は、のらりくらりと追及をかわす。自分の追及のかわしっぷりに、警察からの誘導尋問をうけている犯人が絶妙に返事をかわしているような気すらしてきて、かつ丼でも食べていたら完璧だなと思いながら苦笑いを浮かべる。 「おまえら、もういいだろ。こんな34のおっさんの恋愛なんて興味ないだろーが」 「部長は、見た目いいじゃないですか。それに、年齢より若く見えるし、世間の女子への選り好みが激しいんじゃないですか? モテない俺たちに分けてくださいよー。今だって女子たちが色めきだってるし!」 「もー、酔っ払い。分けてやるほど、モテないし、出会いもないつーの。それに合コンに参加したとしても、『うちの会社、練り物やってまーす』なんて言って、女子が群がるか?」 「そりゃー、練り物会社って地味ですけど、でも今回のカニカマを作ってる会社だよって言ったら、愛猫家の女子たちがこぞってやってくるんじゃないですか? 猫にカニカマ渡したくて……」 「はぁ? お前らカニカマ頼りかよ。お前たちのトークや中身で勝負しろよ」 「俺たちには、カニカマくらいしか武器がないんですってば……」 「いや、カニカマをぶら下げても、寄って来るのは、猫だけだな。きっと……諦めろ」  そういうと、『そりゃそうだ』と周りから聞こえてきて、ドッと場が沸いた。  仕事でもないのに、長時間にも渡る部下たちの相手に疲れてきた蒼は、そろそろ自分の役目は終わっただろうと時計を見る。
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