アイツと俺のビターフレイバー

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 自宅のアパートの前まで来た蒼は、足を止め部屋を見上げた。すると電気が点いていなく真っ暗だった。  今朝、出がけに“カニカマ購入の約束”をした時には、目を輝かせて『待っている』って言っていたはずだ。それなのに、部屋の電気が点いていないのはおかしいと思いながら蒼は首を捻る。 「リンは出かけているのか? それとも、寝ているのかな」  ブツブツと独り言ちながら、部屋のドアの前に着いた。そのまま鍵穴に鍵を入れて回すと、カチャッと音がしない。不審に思いながらドアノブに手を掛け、ドアを開ける。 ー―鍵がかかってない? 「ただいま。おい、ドアを開けっぱなしってお前、不用心だろ!」  そう文句を言いながら、廊下の電気を点けるといつも玄関先に丸まって蒼の帰りを待っている猫の姿をしたリンがいない。 「おい、リン。いるかぁ?」 「おーい、リン、いるんだろ? 約束した通り、大好物のカニカマを買って来たぞ」  全く反応がなく、しかも大好物のカニカマという言葉を聞いても飛び出してこないことに益々不思議に思いながら敷きっぱなしの布団のある居間を目指す。 「ったく、俺も疲れているんだから。早く出て来いよなぁ」    ブツブツと文句を言いながら居間の電気を点けた。
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