アイツと俺のビターフレイバー

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「ヨーグルト……?」  最近、ヨーグルトなんて買って来ていたかと考える。リンは、自分で買い物をして食べるという事をしない。いつだって、蒼が買ってくるものや作るものを美味しそうに食べていたのだ。一緒に買い物に行くことはあっても、一人で買い物はいまだに出来ない。蒼の知る限りは……。 「お前が食べた、このヨーグルトはどうしたんだ?」 「んッ……れ、い……ぞ……こ……」 「はぁ??」  息も絶え絶え紡いだリンの言葉を聞いて焦る。 ――冷蔵庫にヨーグルトなんか入れていたか?  ゴミ箱に入れようとしていたヨーグルトのパッケージを見て驚いた蒼は、すかさずリンの顔を苦し気な表情で見つめる。 「おま……、まさか……これ食べたのか?」 「ん。はぁ……あッ……ふー」 「これ、賞味期限を見なかったのかよ」 「し……ょ……き……げ……」  賞味期限の意味を知らなかったかとも思ったが、日付くらい読めるだろう。  明らかに前の日付すぎるし、おかしいくらい思わなかったのだろうか、と苦しんでいるリンに強めの口調で続ける。 「ここに、日付書いているだろ。もう三週間も前の日付じゃないか! 何でもかんでも口に入れるなって言っているだろう? そりゃぁ、冷蔵庫の整理をしなかった俺も悪いけど、お前も食い意地張りすぎだろーが」  ズボラな自分にイラつき、蒼は「チッ」っと舌を打つ。  心配そうにリンの顔を見つめサワサワとお腹を摩りながら考える。  リンは人の形をしているが、元々猫だ。人間の腹痛の薬が効くのか全く分からない。でも、飲ませないより飲ませた方がまだマシかもしれない。けれど、薬を飲ませることでリンにとっては毒になるかもしれない。  グルグルとどうするのが最善の策なのか決められずにいる間にも、顔色がますます悪くなっているような気がする。
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