深夜の動物愛護精神

4/5
前へ
/75ページ
次へ
***    外へ出た蒼は、月を見上げて寒さにブルッっと身震いをした。  4月中旬だというのに、夜はまだ少し肌寒いなと感じながら、カバンを腕に通しポケットに両手を入れた。そして、肩を縮こませて家路を急ぐ。  今夜は、予定外の飲み会のせいで帰るのが遅くなったが、早くあの温かい部屋へ帰ってスーツを脱いでグレーのスウェットに着替えてゴロゴロしながら過ごしたい。    蒼は歩きながら、この土日の2日間は、家から1歩も出ずに籠ろうと決めた。そうと決めたら、籠る用のマンガや食べ物をコンビニで調達してから帰らなければいけない。  このまま家にまっすぐ帰るのではなく、家から一番近い公園の裏にあるコンビニを目指すために、帰路を変更する。  コンビニへ最短で行けるルートである公園の中を通ろうとしたその時、公園の芝生の方から小さな鳴き声が聞こえてきた。  ミャーミャー……ミャーミャー…… 「ん? 猫の鳴き声?」  ふと蒼は立ち止まり、鳴き声のする方へ歩みを進めると、震えている猫が目に入った。引き寄せられるように猫の近くまで歩いて行くも、一向に逃げる様子がない。  そのまま猫の目の前に蒼は腰を下ろし、さっきまでか細い声で鳴いていた猫をひと撫でする。  ミャーミャー……… 「お前、かわいいなぁ。しかも、お前ってば、ロシアンブルー? 普通なら飼い猫レベルだろう? 迷子か? それとも、捨て猫?」  猫の額を撫でながら話しかけると猫は、か細い声でミャー……と鳴いて喉をゴロゴロと鳴らす。そして、蒼の手のひらに頭を擦り付けてきた。
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!

615人が本棚に入れています
本棚に追加