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最終章
その男はいつも公園にいた。雨に濡れようと、雪が積もろうと、男はいつでもそこに座っていたのだ。
ある日少女が駆け寄ってきて男に話しかけた。
「ねえ、何してるの?」
男は何も答えず、いつもの姿勢を崩すことなく、ただ座るだけだった。少女はそれでも構わずに話しかけた。
「私一昨日この町に引っ越してきたんだ。だからまだ友達もいなくて寂しいの。あなたも一人なの?じゃあ私達おんなじだね」
何も答えない不愛想な男に少女は話し続けた。だが男はどんなに少女が話しかけても、返事をすることも、反応することもなかった。
少女の後ろから母親らしき女性が歩いてきた。
「何してるの?」
「あっ、お母さん。あのね、私ね、このおじちゃんとお話してたの。お友達になってあげたの」
母親は男を一瞥すると「そう、偉いね」と言って娘に手を差し出した。「でもお友達は学校でつくらないとね」
少女は差し出された母の手を嬉しそうに握ると、男に手を振ってから帰っていった。男はその姿を見送ることもなく、ただ黙った座っていた。
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