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「最後に……あんなこと言っちゃってごめんなさい」
少女はやがて遅れてきた青年と短く言葉を交わした後、手を繋いで公園から歩いて行った。
数年後。少女は自分の娘を男の下へと連れてきた。
「お母さん。このおじちゃん変」
少女だった女性は娘の傍で屈むと、「変じゃないわよ」と言って微笑んだ。「このおじさんは何時だってお母さんの話を黙って聞いてくれたの。何でも話せる不思議なおじさんなのよ。おかあさんの大事なお友達」
「へえ、そうなんだ。じゃああたしともお友達ね」
少女はそう言って男を見上げて言った。
「さ、明日から幼稚園だぞ~。友達いっぱい作らなきゃね」
「うん、頑張る。おじちゃんバイバーイ」
手を引っ張られて公園を去っていった女性は、いつしか引っ張る側になり、また公園を去っていった。
残された男はそれからもずっとその公園で座る。雨に濡れようが、雪が積もろうが、ずっと。それがこの男がここにいる意味だったから。
「あのおじちゃんは何してる人なの?」
繋いだ手を引っ張り少女は母親に聞いた。
「んー?そうねぇ」
公園に座る男の姿勢は、膝に両腕を乗せ顎に片方の手を当て、何かを考えているようだった。
「私達を見守っててくれてるの。無口だけどね」
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