群青の幻影

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 二枚の絵はどちらも写実的絵画で、一枚はヨーロッパの古城と池の風景。もう一枚はベーカリーを構図の中心に据えた日本の街角の風景。どちらも色使いに演出があってビジュアル的に映える鮮やかな方向の明るい色使いをした作品である。私は絵画というものに理解があるわけではない。それでもすっと心に入ってくるそのビジュアルは認めざるを得ない力があった。私はもう取り込まれていているのかもしれない、高田源三の世界に。そうした自覚と共にそれ以降の私のすべての行為がある。いいこともわるいこともすべてを引っくるめて今の私は幸せだった。なぜって天から与えられた幸せだから。そう信じることのできる幸せだったからだ。  
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