分かっていたこと

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分かっていたこと

私はいらない子だった。 とてもよく出来る姉がいて、私は出来損ない。 必要性がない。 そんなのわかってる だから逃げるように森へ通った 毎日毎日、おーくんに会うために。 彼は自分を鬼だと言うけれど、 とても優しい心を持っている。 綺麗な目を持っている。 そしてどこか悲しげで... 愛おしかった。 「待ちなさい。」 いつもの様に森に向かう途中だった。 「お母様...私に用事でしょうか?」 まともに話をするのはもう5年ぶりだろうか。 「村から王国に貢物として女性を渡すことになりました。 そしてそれにあなたが選ばれました。 謹んで受けるように。 今すぐ準備しなさい。」 「え...」 私に話しかけてくれたんだ! そう喜んだ瞬間の出来事だった。 「な、何故私なのですか? 私でなければならないのでしょうか...?」 せめてもの理由が欲しかった。 私でなくてはならない理由が。 おーくんを忘れられるほどの理由が... 「...要らないからに決まってるでしょ?」 心が砕ける音がした。
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