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 気付けば暦は6月を迎えようとしていた。あの男性客ももうすっかり常連さんになって、店長も私も、常連さんすべてのオーダーは頭に入っていた。 「今日は久しぶりに俺がホールやるから、お前中入って」  珍しくオープン前に店長がそんなことを言った。 「どうしたの、急に」 「いや、あんまりホールに出てないと、接客も怪しくなってくるからな。こないだまでずっと新人教育やりながらホールに出てたときに、まずいと思ったんだわ」  4月から立て続けに入った新人を、5月半ばまでずっと教育していた。研修期間がやっと全員終えるのに一か月半。それもあってなのか、普段通りの流れが滞っていつもよりも慌ただしかったのもあって、店員がみな少しピリピリしていた。空気を和らげるためにと店長や私は冗談も挟みつつやってきたが、まさかそんなところに危機感を抱いていたとは思わなかった。 「はーい。ミスのないように、よろしくね」  私は笑いながら、もう身に着けていたハンディを店長に手渡した。  店が開くと、いつも通りの面々が入ってきた。中には、マスターが出てくるなんて珍しいね、なんて声も聞こえてきた。店長だって勿論のごとくお客さんとは顔なじみだ。
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