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あかねは表面上、まじめで平凡な女子高生だった。
先生にバレない程度にうっすらと茶色く染めた髪を、これまた自然を装い内巻きにカールさせ、顔には薄くファンデーションを施す。近所のおばさんとすれ違えば、「まあこんなに大きくなって」といつも親しげに声をかけられる。それがあかねの日常だった。
けれど、あかねには秘密がある。秘密というほどでもないのだがーーうら若き女子高生にとって、人にはとても言い難いことだ。
学校から帰って家に着くと、家族で夕食を済ませ、順番に風呂に入り、あかねは2階の部屋で宿題を始める。そして宿題もそこそこにリビングに下りて、家事を終えた母と楽しみにしているドラマを鑑賞する。いつも通りの平和な一時。
ドラマを見終え、なんとなしにソファでごろごろ。最近ハマったスナック菓子をつまみながら、スマホでSNSを確認する。友達の投稿に適当に反応していると、テレビからちらりと視線を外した母から一言。
「あかね、もうそろそろ寝なさい」
「はーい」
よっこらせ、とソファから起き上がり、あかねはスマホを片手にリビングをあとにする。
思春期の女の子なら文句のひとつも出そうなところだが、あかねにはそういった反抗心は芽生えない。なぜなら、あかねの1日の楽しみは、むしろベッドに入ってから始まるからだ。
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