あかねの世界

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「はは、本当? うれしいな」 「よく言うわよ。見てって駄々こねたの、ユウヤじゃない」 「そうだったかな? それでも、やっぱりうれしいよ。あかねが見てるんだと思うと、いつもよりがんばれる」 「もう、ユウヤったら!」 抱きつく腕にますます力が入る。 妄想の彼氏は、自分のしてほしいことを全部してくれる。逆に、どんなことをすれば相手が喜ぶかもわかるから、現実のように気を遣うこともない。家族以外にはーー時には家族にすらも、気を遣ってしまう長女気質のあかねには最高のシチュエーションだ。 幸い、あかねの妄想力は並大抵ではなかった。1人きりならいつまででもその世界に浸っていられるし、ふと我に返って虚しくなることもない。 「だってまた明日も、ここに来れば会えるんだもんね!」 「ん? うん、そうだね。あかねの好きなときに、いつでも会いに来て」 優しい優しいあかねだけの彼氏、あかねだけの世界。なんでもしたいようにさせてくれる。あかねは、好きなことだけしていたらいい。 今日も充実した心地でピンク色の世界に浸るあかねの体は、拒む意思とは裏腹に、今度は眠りの世界へと悠々と誘われていったーー
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