0人が本棚に入れています
本棚に追加
パチリ、とあかねの大きな目が開く。そのまま数度のまばたき。
あかねには、自分が今まで眠っていたのかどうか判別できなかった。
カーテンの隙間からのぞく日の光は明るく、朝が来たのだとわかる。頭も、なんだか妙にすっきりしているようだ。
端からは眠っていたに違いないと言われるだろうが、あかねにはどうにも違和感があった。
目を閉じてから、それほど時間が経ったように思えない。あかねのなかでは、ただ1度瞬きをしただけのはずだった。
自分で自分がわからなかったが、まあそんな日もあるか、とゆっくりと身を起こそうとした、そのとき。
もぞ、と布団のなかで何かが蠢いた。一瞬であかねの思考は停止し、同時に体も固まる。布団のなかにはあかねと、あかねの抱き枕しかなかったはず。目を見張りながら、あかねは必死に思考を巡らせた。
自分の足? いやいや、そんなはずはない。なら、人懐っこい猫とか……ペットなんて飼った覚えもないけれど。
馬鹿みたいにあり得ない可能性を一通り探ったあと、ついに意を決したあかねは、自分の布団を勢いよく捲った。
布同士の擦れ合う乾いた音ーー結局勇気の出なかったあかねは、堅く目を閉じたままだった。
ドゴンドゴンとけたたましく鳴る彼女の心臓の音を遮ったのは。
「んん、まぶしい。あかね、どうかした?」
最初のコメントを投稿しよう!