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聞き覚えのある、優しい声だった。
「ユウ、ヤ?」
「うん、そうだけど……ふふ。なに、寝ぼけてるの?」
「えっと、寝ぼけてるっていうか」
むしろ、これは夢?
そう思うと、濁ったあかねの頭は急激に冴え始めた。
そう、これはきっと夢に違いない。本当のあかね自身は、まだ現実で眠っているのだ。
妄想がそのまま夢になるーー誰しも1度は願う「夢」だ。妄想力だけは人よりあると自負していたあかねだったが、まさかこれほどとは、本人も夢にも思っていなかった。
「あかね、大丈夫? なんだかぼーっとしてるけど。熱でも出た?」
あかねとお揃いの、水色のチェックのパジャマを着た彼が起き上がってあかねを覗きこむ。眉を八の字に下げた心配そうな顔が、あかねの視界いっぱいに広がった。おでこに感じる彼の熱、彼の吐息ーー何もかもがリアルだった。
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