あかねの世界

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眠りたくない。眠ったら、きっとこの夢からは醒めてしまう。 あかねは何度も、必死に自分の目を擦った。 「ああ、だめだよ。そんなに擦ったら、腫れてしまう」 ユウヤがやんわりとその手をつかみ、あかねの悪あがきを制する。 「だって、まだあなたと離れたくないの」 「そうなのかい? 大丈夫、目が覚めればまた会えるよ」 「そんなことない。眠ったら、待っているのはつまらない現実だもの」 「ふふ、おかしなことを言うね。眠ったら、現実を見るなんて」 片手を口元に、彼が上品に微笑む。あかねはその甘いマスクを、いつまでだって眺めていたかった。 「ほら、我慢しないで。ゆっくりおやすみ」 優しい悪魔が魅惑の笑みで誘いかける。甘える気持ちと抗う気持ちがあかねのなかで交錯する。 眠りたくない、眠りたい、まだ彼と、もう1度眠ればーー意識が白濁していく。しばらく自分の瞼と格闘してから、とうとうあかねは眠りのなかへ落ちてしまった。
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