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現実
ゆりかごのように、誰かに体を揺すられている。違和感を察知した体が、少しずつ覚醒に入っていく。
ずいぶんぐっすりと眠っていたのか、あかねの頭はなかなか起きようとしなかった。
腕に力が入らない。まだもう少し眠っていたい。
あかねの甘えた心を振り切ったのは、目に冴える整った顔立ちの彼だった。
「あかね、もう朝だよ。起きて俺と話そう?」
あかねは驚いて唐突に身を起こす。同時に、記憶や意識が一気に体へと戻ってきた。
そうだ。私、彼と眠って……それって、いつの話だっけ。そう、たしか学校から帰って、この人のドラマを見たあの日……あの日? あの日って、いつのこと?
「ほら。あかね、言ったでしょ? 目が覚めればまた会えるって」
緩やかに口角を上げた表情も、夢みたいに綺麗だった。ということは、まだ夢を見ているのか?
あかねにはわからなかった。夢の中で、また夢を見ている。あかねの記憶が正しければ、ついさっき眠ったときも、彼がそばにいたはずだ。
「ねえ、これって夢でしょう?」
たまらず、あかねは不安を口に出す。
夢ならば、きっとこれで醒めるはず。夢は決まって、本人が自覚したときに醒めるものだから。
しかし、美しい顔で彼は言う。
「あかね、まだ寝惚けているの?」
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