それぞれの一歩

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 と。  物理的にも精神的にも、見えるはずのない海が、そんなことを口に出す。  私と椿ちゃんは、海に注目を向ける。 「これはただの独り言だけど──俺は、椿山が人生で一番の女友達だと思っている」  海は言う。 「でも、だからごめん。俺は椿山とは付き合えない。俺は美亜が好きだから。椿山の気持ちに気付いてあげられなかった。それを伝えずに行かせてしまった」  海が言う。 「だから約束する。お前の親友を、輪之内美亜を、必ず幸せにしてみせる」  ──ありがとう。 「椿、じゃあな」  頬を紅潮させて嬉しそうな椿ちゃんは、私をしっかりと見て、優しく手を振った。  最後は笑顔で── 「……行っちゃった」 「そうか」 「私、海が好き」 「──そうか」 「あんな啖呵切っちゃって大丈夫なの?」 「どうだろうな……」 「ばーか。大丈夫に決まってるでしょ」  私と、その大親友が好きになった人なんだから。
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