それぞれの一歩

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 椿ちゃんは言った。  海のことが、渚井(なぎさい)海のことが好きだと。  私に向かってそう言った。  そして、それを海に伝えてほしいとも。  きっと、彼は手放しで喜ぶだろう。  ずっと好きだった人が、自分を好いてくれているということがわかるのだから。  きっと、喜んでくれる── 「いやだ」  海は言った。  はっきりと。 「……ダメだよ、人の話はちゃんと聞かないと」  どうしてだろう。声が震える。 「椿ちゃんは、海のことが好きなんだよ」  畏れを隠し、悟すように。  でも海は、 「駄目だ。僕は椿山とは付き合えない」  なんてことを平然と言うのだ。 「なんでよ……」  そんなの……怒るに決まっている。 「椿ちゃん言ってたもん! 海のことが好きだって。ずっと好きだって! ずっと前に! 「……お前はどうなんだ? 輪之内(わのうち)美亜(みあ)
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